女性に特有のこころの病気とは

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女性は男性の約2倍も、うつ病になりやすいということをご存じでしょうか。
これは、女性の身体が一生を通じて女性ホルモンの影響を受けることと関連しているのです。

女性ホルモンは卵巣から分泌されるエストロゲンプロゲステロンの2種類があります。

エストロゲンは女性らしい身体を作り、子宮内膜を増殖させて妊娠の準備をします。プロゲステロンは子供を産み育てることにかかわるホルモンで、卵巣から卵子が排卵された際に(排卵後の月経前)、子宮内膜を成熟させて受精卵が着床しやすくする、妊娠した時に、その継続を助けるためにはたらきます。この目的のためプロゲステロンは食欲や眠気を増し、体温を上昇させ、水分を溜めこむように働きます。

女性ホルモンの推移とうつ病に注意が必要な時期
  • 月経前…プロゲステロンの分泌が増える
  • 出産後…妊娠中には大量に分泌されていたプロゲステロンとエストロゲンが急激に減少
  • 更年期…閉経前後、エストロゲンの分泌が急激に減少する

※多くの女性が専門的な治療が必要とは言わない程度に、月経前、あるいは月経中に何らかの心身の不調を感じた経験があると思います。
一般的に月経前の心身の不調のことを月経前症候群(PMS)と称します。

月経前不快気分障害(PMDD)

排卵後から月経開始までの期間、うつ病と同様の症状が出現することで、仕事や家庭、学校生活などでの日常生活や対人関係に支障を来している状態です。ただしこれらの症状は、月経が開始するとともに速やかに改善し、月経後の1週間は完全に元に戻っていることも特徴です。これが適切な治療を行わないと毎月起こります。遺伝的な影響も高いと考えられています。

症状

強い不安と落ち込みはイライラ感の自覚としてみられ、緒不安定になり、怒りっぽくなり、感情のコントロールができないと感じます。集中力、気力低下、疲れやすさのため、仕事ができなくなることもあります。この状態の時は、異常に眠くなったり、食欲が増したりします。プロゲステロンの増加が影響していると考えられます。

治療

症状のある期間だけ、抗うつ剤の一種である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を投与します。

産後うつ病

出産後に涙もろくなったり、落ち込んだり、神経過敏になったり、情緒不安定になることは、しばしばみられ、「マタニティブルー」と称されます。このマタニティブルーな状態が、産院から帰宅した後も続き、産後うつ病に移行することがあります。 妊娠中からうつ病になることもあり、周産期(出産前後の時期)うつ病ともいわれています。
妊娠期の7~13%、産褥期(出産後6~8週後までの子宮が元に戻るまでの期間)で10~15%に、うつ病が認められるといわれており、女性にとって母親になることを意味する妊娠出産がいかに心身ともにストレスのかかるライフイベントであるかを物語っています。

原因

女性ホルモンの変動に加え、育児への不安や母親になることへの葛藤、夫婦間の葛藤などの心理的不安も影響します。頼れる人手や、安心して相談できる人の不在など社会的要因も強く影響します。

治療

早急に専門医を受診し、適切な治療を受ける必要があります。必要に応じて入院も含めた治療体制の中で、薬物療法、心理療法を行います。並行して産後の授乳などの育児を手助け、あるいは代替えすることで、十分な休息をとることが重要です。そのための支援体制を、行政と連携して行い、安心して治療を受けるための支援体制を作ります。

症状

産後うつ病に特徴的な症状として、うつ病に典型的な強い抑うつ気分や疲労感に加え、①不安が強い ②自分はダメな人間だと、自己卑下や自責感が強い ③致死性の強い自殺の手段を取りやすい ④精神科を受診しようとしない などです。

空の巣症候群

女性の更年期に相当する年代は、子育てが一段落して子供が家から自立していく時期です。
母親として生活の相当部分を子育てに捧げていた女性には、子供の自立は喜びと同時に強い喪失感に襲われる出来事です。母親としての役割を終え、あらたなライフステージに向けて自己実現の模索をする中で、病的な喪失感が長引き、うつ病に発展することもあります。背景に、女性ホルモンの減少が考えられます。

産褥期精神病

急性の錯乱状態、夢と現実の区別のつかない激しい興奮状態が、産後から2~3週間後に引き起こされることがあります。一時的な状態ですが、緊急対応が必要で、精神科救急システムの導入が必要です。妊娠中や産後に何らかの不安がある方は、早めの精神科受診をお勧めします。