統合失調症とは
自分の周辺が、だんだんと不気味で怪しい世界に変化し、誰も信用できなくなってしまったら?これは統合失調症の患者さんが生きている世界です。
統合失調症は青年期に発症することが多い疾患です。脳内神経ネットワークの障害により、思考や行動、感情をまとめていく能力が低下し、自分と他人の境界認識が曖昧になり、自分で思考しているという認識が弱くなり、他人にあやつられている、考えていることが他人に筒抜けになる、他人が自分の思考を抜き取られるといった、「自我障害」を生じます。そこに幻覚や妄想といった特徴的な精神症状が現れ、日常生活に支障を来すようになります。
症状
① 陽性症状 ②陰性症状 ③認知機能障害に分けられます。
①陽性症状
脳内にドーパミンという物質が過剰に分泌されている状態です。
- 幻聴…現実にないものが聞こえます。自分の考えていることが声になって聞こえたり、ひそひそと自分のことを悪く言う会話が聞こえたり、直接自分に語りかけてきたりします。
声に出して幻聴に応えていると、独り言を言っているように聞こえます。 - 妄想…監視されている、噂されている、組織に狙われているなどの被害妄想や、自分は天皇であると主張するなどの誇大妄想がみられます。
- 興奮、衝動性…興奮して大声で叫んだり、粗暴行為に及んだり、二階から飛び降りようとするなどの危険な行為に及ぶこともあります。
②陰性症状
- 喜怒哀楽が乏しくなり
- 意欲が低下し
- 他人との関わりを避けて、こもりがちになります
③認知機能障害
- 記憶力、注意力、判断力、計画を立てる力などの思考機能が低下します
治療と経過
-
前駆期前触れの時期があり、疲れやすさや抑うつなどうつ病に似た症状や不眠、聴覚過敏など、さまざまな精神的不調がみられます。徐々に緊張度が増し、急性期という陽性症状が顕著になる時期には、不眠食欲低下、身体的な消耗が見られます。早急な薬物療法の導入と心身の休息が何より重要です。必要に応じて入院治療を導入します。
-
消耗期急性期にエネルギーを使い果たし、心身とも疲労する時期です。疲れやすく、活動が鈍くなり、集中できません。非常によく眠ることによって、エネルギーを蓄えられます。
回復期へとつながる非常に重要な時期です。受動的で両親に子供のように甘えたりすることもあります。 -
回復期消耗期を経て社会とのつながりを持とうとする時期です。陰性症状が目立ち、感情が動かない、気力がない、関心が持てないなどの症状が長期間続くこともありますが、次第に自分の好きなことから少しずつやれることが見えてきます。回復のペースはゆっくりですが、焦りは禁物。家族が病気への理解を持ち、過剰に干渉せず、本人を安心させてください。努力や無理をさせることなく、本人の治癒力を待ちましょう。このころから少しずつ、デイケアなどでリハビリテーションを始めましょう。統合失調症の治療は、薬物療法が不可欠と言っても過言ではありません。
過剰なドーパミンを抑制する効果を持つ抗精神病薬による薬物療法を中心としつつ、精神療法やリハビリテーションを組み合わせます -
薬物療法病気がわかったら、できるだけ早くから薬物療法を開始するほど、回復がスムーズになります。反対に治療開始が遅くなればなるほど、回復に困難を生じることがあります。抗精神病薬は、症状を改善するだけでなく、再発を防止するはたらきがあります。統合失調症は非常に再発しやすい疾患です。症状が治まったから完治したのだと誤解して、自己判断で薬をやめてしまうと1年以内に約80%、2年以内に98%の方が再発するという報告もあります。再発を繰り返すと、次第に薬物療法の効果が低下し、症状の回復も低下するため、自立した生活を送るための能力が低下するといわれています。
統合失調症の治療の目標は、再発をできるだけ防ぎ、症状を抑えて生きがいのある生活を送ることです。そのためには、適量の薬物療法を継続することが大変重要になります。 -
リハビリテーション急性期を薬物療法と入院治療も含めた環境の調整で乗り切った後は、エネルギーが消耗されて、元気がない、やる気がでないなどの状態が続き、徐々に心と体が安定していきます。認知機能の回復のためにも、精神科リハビリテーションは非常に重要で、治療早期に開始するのが有効です。認知機能トレーニングやソーシャルスキルトレーニングなどを行っているデイケアや就労支援事業所をお勧めします。