うつ病とは
誰しも、「憂うつ」「落ち込む」という状態は経験したことがあるでしょう。それが非常に強く、長く続く場合にはうつ病の可能性があります。うつ病の方の多くは、程度の差はあれ自殺を考えます。自殺を防止することが治療の過程で重要となります。
うつ病はストレス社会の現代において、状況によって誰もがかかり得る病気です。責任感が強い生真面目な性格、生活上の変化やストレス、何らかの身体疾患や治療薬の影響など、多様な要因が存在します。
症状
これらの症状が2週間以上続く場合、うつ病と診断されます。
- 感情面の症状: 落ち込み、喜びを感じられない、イラつき、寂しい、不安、焦り
- 意欲面の症状: やる気が出ない、朝起きづらい、身支度や入浴などがおっくう
- 思考面の症状: 集中できない、決断できない、計画を立てられない、反芻思考(同じ考えが堂々巡りします)
- 体調不良: 不眠、食欲低下、だるい、疲れやすい、身体の痛みなど、
- 絶望感: 後悔にとらわれる、将来への悲観、自分には価値がないと考え、自分を責めてしまいます
- 自殺願望: 軽いと漠然と消えたいと思います。死にたいという気持ちが強くなると、具体的に自殺の方法を考えたり、自傷行為や自殺未遂に及びます
治療
うつ病の治療に重要なのは、まずとにかく休むことにつきます。しかし、これは現代に生きる私たちにとって簡単なことではありません。治療が始まったら、どうやってこの休みを確保するかを、一緒に考えることになります。
治療の期間は、急性期(1~3か月)、回復期(4~6か月)、再発予防期(1年~)と大まかに3つの期間に分かれます。軽症で早期に治療を開始した場合には、より早く回復に移行できます。
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急性期良質な休息をとることが重要です。仕事や課題を軽減してもらうか、場合によっては、診断書を書いてもらって休職して業務から遠ざかり、横になってゴロゴロする、というのが初期には非常に大切です。ただゴロゴロといっても昼夜逆転にならないように、体内時計を整えることも重要で、昼間に眠り過ぎたり、眠れないからと飲酒したりするのは避けてください。
ほとんどの人が不眠になるため、脳を休息させるために、睡眠薬を処方します。主婦の方は、家が職場のようなものですから、家にいると散らかっていくのが耐えられず、動きたくても動けないという葛藤のため心が休まらないと思いますので、入院が役に立つこともあります。家族や周囲の人が、休養を取ることに理解を持ち、不用意にさまざまな提案や指示(少しは運動するように、気の持ちようだからなど)を控えるようにしてください。うつ病の症状には、「反芻思考」といい、悲観的な考えが堂々巡りして、結果としてますます落ち込みが強くなります。少しでも心が楽になるような方法を一緒に考えましょう。
休息と同時に、治療の中心となるのは、脳内神経伝達物質であるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン分泌を是正する「抗うつ薬」を中心とした薬物療法です。薬の効果が表れるためにはおおむね2週間かかり、副作用や逆作用(かえって落ち込みやイライラが強くなるなど)が出現することもありますので、しっかりと説明を受け、疑問があれば遠慮なく医師にご相談ください。 -
回復期休息と薬物療法が功を奏して、気分が楽になってきます。この時期はやるべきことではなく、やりたいことを少しずつやり始めましょう。取り組む気力が出てきたら心理療法として「認知行動療法」や「対人関係療法」が有効とされています。
重要なのは、「元気になった」と判断して、仕事を始めたり、自己判断で薬を止めないことです。途中でぶり返すことになります。 -
再発予防期薬は飲み続けます。仕事に戻ることをイメージしながら、生活リズムを整え、復職の練習を行います。また復職に際しては、リワークなどで行うリハビリテーションが不可欠です。復職は、最初は時間短縮や軽減勤務など配慮してもらいます。復帰しても、しばらく通院を続けます。※認知行動療法とは(CBT)…うつ病の方は、ストレスフルな出来事にあったとき、その出来事に対して悲観的で、偏った考え方をしてしまい、その結果、いやな気分になったり、不適切な行動を取ったりしてしまいます。CBTは、自分の考え方の癖を客観的に見直し、改善することで、抑うつ気分や不安などの不快な感情を減らす治療です。うつ病の治療及び、再発予防に非常に有効です。当院では現在行っておりませんが、今後導入予定です。
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その他の治療薬物療法の効果が得られなかったり、激しい症状で早い効果の出現を必要とする場合は、mECT(修正型電気けいれん療法)が非常に有効です。また近年は、rTMS(経頭蓋磁気刺激法)も新しいうつ病の治療法として保険適応されています。