認知症

高齢者の画像

ご家族にこんなことはありませんか?認知症かもしれません。

  • 何度も同じことを話したり、聴いたりする
  • 約束をすっぽかしてしまう
  • 趣味や関心事に興味を示さなくなった
  • おしゃれだったのに、身だしなみを気にしなくなった
  • 通い慣れている道なのに迷ってしまう
  • 些細なことでよく怒る

脳を構成する神経細胞は、正常であっても加齢に伴って減少し続けるものです。認知症は、何らかの原因で病的に崩壊し、減少することにより、記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障をきたすものです。いったん発症すると元の状態に戻すのは多くの場合困難です。
下記に示す、周辺症状を改善することで、介護がスムーズになります。また症状ががごく軽度の場合には認知症に発展することを防ぐことも可能です。

症状

中核症状と周辺症状に分けられます。

中核症状

物忘れをはじめとする認知機能の低下です。

などの症状があります。

※年齢相応の物忘れと認知症の違い

認知症の物忘れは、体験したことそのものも忘れています。朝ご飯に何を食べたか思い出せないだけでなく、朝ご飯を食べたかどうかを忘れてしまいます。

周辺症状(行動・心理症状)

中核症状に環境要因、身体要因、心理要因などの相互作用によって、様々な精神症状や行動障害を起こすことをさします。不安、困惑、自分を責める、抑うつなどのうつ状態、パートナーが浮気していると信じ込む妄想、家族がお金を盗んだと信じる物盗られ妄想、暴言や暴力、徘徊などの行動異常や入浴の拒否などの介護抵抗、昼夜逆転、食事をとらない、暴飲暴食、食べられないものを口に入れる異食など、介護者である家族に大きな負担となります。

認知症の種類

認知症の原因は70種類以上あるといわれています。多いのはアルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の順です。

治療

薬物療法…現時点では、有効な薬物療法は確立していませんが、病気の進行を遅らせるといわれているコリンエステラーゼ阻害薬を中心とした薬物療法を、早期から導入することが有効とされます。より効果があるとされる治療薬のさらなる研究が待たれます。現在のところ、認知症の治療の目的は、周囲でサポートする人たちの介護の負担を軽減することが主眼となっており、上記のような症状を軽減するために、興奮を沈め、心を安定させる抗精神病薬を、副作用が起こらない程度に最小限使用します。

周辺症状の背景には、必ず本人なりの理由があります。本人がなぜそのような行動をとっているのかを理解しようと試みつつ、気持ちに寄り添った対応をすることで、周辺症状が軽減することもあります。薬物療法以外の治療法として、生活リズムを改善し、他者との関わりを行い、喜びや刺激を脳に与える、作業療法、運動療法、回想療法、音楽療法などのリハビリテーションがあります。これらを行っているデイサービス等の通所先を探しましょう。

せん妄

せん妄のイメージ画像

昼間は落ち着いているのに、夜になると騒ぎ出して眠らなかったり、ないはずの物や人が見えると興奮したりする高齢の方は、稀ではありません。「せん妄」とは、意識障害(意識がクリアでない状態)の一種で、注意や理解、記憶などの精神機能が急性に低下、変動することが特徴です。高齢で、脳に器質的な変化が生じていることを背景に、入院や施設入所などの環境変化や、せん妄を引き起こしやすい成分を含んでいる薬剤が引き金となる場合が多いです。

症状

過活動型せん妄でよくみられるのが、「夜間せん妄」といって夕方から夜にかけて悪化し、幻視が見えたり、興奮して家じゅうを徘徊するなどの過活動な状態になり、家族が対応に困ることがあります。また、低活動型せん妄といって、うつらうつらして、発語が少なく、ぼんやりして活力が減少するようなタイプもあります。

※せん妄を起こしやすい薬剤…高齢者は健康不安から複数の医療機関でたくさんの薬を飲んでいることが少なくありません。痛み止めや胃薬、睡眠薬や抗不安薬などはせん妄を起こしやすい薬剤です。たくさんの薬を飲んでいて、せん妄を起こしている可能性のある方は、ご相談ください。

治療

原因を除去、減らすことは重要です。服薬しているたくさんの薬を見直したり、居心地のよい環境に整えることを行いつつ、必要に応じて抗精神病薬による対症療法が行われます。
せん妄は治療の前に、予防が重要です。身体疾患を合併して入院している患者さんがせん妄になると、予後が不良になることがわかっています。

老年期うつ病

うつ病は認知症と並んで多く見られる、老年期のこころの病気で、高齢者人口の10~15%と考えられています。脳の加齢性の変化や老年期特有の社会的、心理的状況(孤立や孤独、病気、健康不安、喪失など)がきっかけとなり、うつ病を発症すると考えられます。 認知症にうつ病を合併することも多いことが知られています。

症状

高齢者のうつ病の特徴は、

似た病気に注意

一見うつ病のように思われますが、実は薬の副作用で抑うつ状態になっていたり、せん妄という意識障害であったりすることもあり、鑑別に注意を要します。また、認知症の周辺症状にみられる「アパシー(無関心、無反応、自発性低下)」は、落ち込みなど抑うつ気分を欠くのが、うつ病との違いです。

治療

薬物療法と精神療法を組み合わせます。

老年期うつ病には、電気けいれん療法の有効性が高く、効果の発現が速いため、自殺のリスクが切迫していたり、飲食を拒否して栄養障害を起こしている場合には特に推奨されます。