- 7月 5, 2026
お手紙ありがとう
ネネさんへ。
先日、診察室を出ていく間際に「そういえば」と手渡しれくれた、あの手紙。 「今読んでいい?」と聞く私に、「いや、あとにしてください」と少し照れたように答えたあなたの表情が、今も印象に残っています。
こらえ性のない私は、あなたが退室した後、すぐに封を切りました。 整った文字で、便せん3枚にぎっしりと綴られた言葉たち。そこには、出会ってからの10年間、あなたが私との診察をどのように感じていたのかが、ネネさんの言葉でありのままに書かれていました。
読み進めるうちに、胸が熱くなり、深い感動が込み上げてきました。
思い返せば、10代の終わりに出会ったころのネネさんは、心も体も、そして日々の暮らしも、決して安定しているとは言えない状態でしたね。専門学校でのこと、親御さんとの関係、そして辛さのあまりに自分を傷つけてしまっていたこと。あの時期の苦しさは、どれほどの手探りだったかと思います。
でも、ネネさんには最初から、自分自身を深く見つめる素晴らしい内省力がありました。自分の心と向き合い、一生懸命に書き留めたメモを診察室に持ってきてくれたことを、今でもよく覚えています。
それからの10年、ネネさんはもがきながらも、自分が選んだ道を一歩ずつ歩んできました。 フットワーク軽くいろいろなことに挑戦し、赤十字の救命処置の認定を取ったり、家業を手伝ったり、趣味のビーズデコレーションでプロのような見事な作品を作り上げたり。 いつしか私の役割は、ネネさんの日々のお話を、ただただ興味津々で聴くことだけになっていました。
ある日突然、ウエディングドレス姿できめポーズをとった美しい写真を見せてくれたときは、本当に嬉しかった。
結婚生活が始まり、大人としての現実を生き始めた矢先、お父さんの重病という大きな試練が重なりました。家業のこと、新婚生活の大変さ。先日の診察でも、あなたがまさに大人の現実の荒波のなかに立ち、必死に前を向こうとしている姿が伝わってきました。
手紙の中でネネさんは、私があなたの成長を感じてそれを伝えていたことに、大きな喜びを感じてくれていたと書いてくれましたね。それらの言葉は自然に心から出ていたのです。
それを知ったとき、私は改めて気づかされたのです。 医師と患者という関係でありながら、私たちは意図せずして、互いに影響し合い、支え合う力を分け合っていたのだと。ネネさんの歩みが私を励まし、私の言葉がネネさんの力になっていたのなら、これほど嬉しいことはありません。
手紙を読み終えた私は、どうしてもすぐに気持ちを伝えたくて、小さなちぎり紙に乱筆でほんの一言だけお礼を書き、会計を待つあなたに手渡しました。
あの短い言葉ではとても伝えきれなかった思いを込めて、このブログをネネさんへの「お返事」として送ります。
ネネさん、素敵な手紙を本当にありがとう。 医師と患者という治療の場で、「聴く」という行為がもたらす奇跡のようなつながりについて、私はこれからも大切に、深く考えていきたいと思っています。
これからも、あなたの歩む道をずっと応援しています。

今を、夢中で走る。