

- 8月 18, 2025
巣立つ日まで
長年、精神科医をしていると、10年以上の関わりがある患者さんがぽつぽつといらっしゃる。すると自然と、中学生だった子が二人のお子さんを持つ親になったり、不登校だっ…
長年、精神科医をしていると、10年以上の関わりがある患者さんがぽつぽつといらっしゃる。すると自然と、中学生だった子が二人のお子さんを持つ親になったり、不登校だっ…
昭和の頃、お中元やお歳暮は、風呂敷に包んでお世話になったお宅を訪問し、「つまらないものですが」などと言いながら、玄関口で奥ゆかしく手渡すものであった。受け取る方…
まるで出口の見えないトンネルの中にいるかのように、歩いても歩いても光が見えない。 立ち尽くして茫然としてしまう。 私たちの人生は、常に光の中にあるわけではない。…
私のクリニックに来る人たちの多くは女性だ。 自分のことより家族や他者を優先する、優しさに満ちた人がほとんどである。 みずほさんも、そんな女性の一人だ。道を尋ねた…
プロの料理界は男性上位、でも家庭料理の担い手は今もって女性──。そんな話を耳にするたび、どうにも腹立たしくなる。 私の中高時代、男子は技術、女子は家庭科ときっぱ…
慣れ親しんだマンションから、少しこぢんまりとした住まいへ。ご夫婦で新しい生活を始めた、みちよさん。その引越しは、必ずしも本人が望んだものではなかった。 お連れ合…
物心ついたころから、私のまわりにはいつも草の匂いがあったように思う。 家の庭には、ままごと用にすりつぶす分厚い葉のつく草が、学校への道すがらも、そこかしこに草む…
「もう、無理です!」 切羽詰まったその言葉は、さやかさんの心の叫びだった。彼女の22歳になる娘さんは、心の不調を抱えている。薬の調整がうまくいかず、ここ数日、夜…
帰り着くと、決まって玄関の靴箱の上にはダイレクトメールの小山ができている。その崩れかけた山のてっぺんに、宛名が手書きの一枚の葉書が載っていた。差出人は、年に一度…
先日、所用でとある市役所の、障害福祉課というところへ足を運んだ。 待合の、少し固いベンチに腰を下ろして順番を待つともなく待っていると、隣の窓口の声が、どうしたっ…